登り始めてすぐ目に付くのがハイマツと名前のわからない真緑の植物。後で知ったが、オンタデというらしい。7合目のちょっと上辺りまではこの草があった。赤や黄色ではなく緑や黒の原色の世界。これはいつもの登山と違うと実感した。ま、高い木がないから当然なんだけど。ちなみに岩陰にひっそりと可憐に咲いていた白い花はフジハタザオだった。ちょっと歩くと環境省が2億円かけて作ったというバイオトイレがある。一回200円。この先富士山のトイレはどれも200円だった。だが、駐車場のそばのトイレですましていたのでここはスルー。6合目の山小屋を目指す。
30分ほど登ると簡単に6合目に到着。が、「ここからが本番」との看板が。そりゃそうだよなあ。ここで娘のために金剛杖を買う。1000円。息子にはやや大きく、ちいさいサイズもあったが、いつも息子はストックを使わないのでいらないと判断した。
杖には合目ごとに焼印を押してもらうことができ(200円。頂上は300円)これが結構励みになるとネットに書かれていたので、娘にやる気を出させるためにも購入した。そもそも今回の登山で心配だったのが娘のやる気だった。いつもの登山は半ばいやいや参加している感じだし、実際登ってみてもわずか数百メートルほどで「帰りたい」とつぶやくほどだ。それが3776mともなればどんな気持ちで臨んでいるのか、推して知るべしだろう。
出発の際の車の中でも吉祥丸が「さあ、出発だ」と言ったのに対し「ハアア…」とため息をついただけだったもんなあ。ただ、娘には登頂の暁にはハムスターと「Bonte」というイラストの本を買ってあげる約束をしていた。娘はその約束を唯一の励みにがんばろうと思っている様子だ。ご褒美のためにがんばるというのは感心しないが(あげるほうもあげるほうだが)、動機は何であれ、結果は娘にとって必ずプラスになると父は確信していたのだった。
6合目を通過して百メートルも行かないうちに息子が「トイレ」。危ない危ない。これがあと数百メートル進んだ後だったらにっちもさっちも行かなくなるところだ。息子と一緒に引き返して200円のトイレを使う。実はこの後も一回、同じような場面があった。そのときは8合目から20mほど登ったときだった。息子のトイレタイミングがうまくいくというのは僥倖であって、こうした面から見ても、今回の富士登山はほぼ全ての面がうまくいったといえる。ただ一つ、高山病を除いて…。




