月曜日, 10月 08, 2007

槍ヶ岳登山 その5

槍が見えた時点で吉祥丸の腕時計の高度計は2600Mになっていた。ということはあと400Mで槍の肩に着くということだ。距離は1500M。まだあるなあ、というのが正直なところだったが、槍も見えることだし、いよいよラストスパートと考えれば足も進むというものである。

もっとも、肩についても終わりではないというのが萎えるところだ。頂上はそこから200M弱。しかもこれまでとは違う岩場の急登である。

が、そんなことを今から案じても仕方ない。とにかく肩に着くことだ。穂先に登れるかどうかはそのときに残っている体力で決められるだろう(実際は穂先への登りは、なんというか「別腹」だった)。

ここから8分ほど登るとヒュッテ「大槍JCT」の道標があり、さらに11分登ると坊主の岩小屋に着いた。播隆上人はこの岩の中で最高50数日間も過ごしたという。とてもまねできないが、彼の信念が槍ヶ岳をこれだけ身近なものにしたのも事実だから、彼の功績には敬意を表さないわけにはいかないのである(実際の彼の信念はちょっと邪道?のようだが)。このときには休憩する下山者がいたのでできなかったが、帰りにここを通ったときには合掌して安全に穂先に登れたことを感謝した。

岩小屋を越えると、いよいよ穂先が近くなる。殺傷ヒュッテも近くなる。が、依然として肩は遠い。

それでも「あのカーブを超えたら休憩」とか、「あそこまでいけばかなり楽になるはず」などと思いながら一歩一歩進んでいくと、だんだん槍が目前に迫ってきて、さらにいつの間にか殺傷ヒュッテを追い越してしまっていた。
そして、しばらく登り、何十回目かの「あのカーブで休もう」と思っていたカーブに着いたときだ。ふと上方を見上げると、もう次のカーブはなく、あとの山道は一直線に山荘のある肩に続いているのだった。

えっ、これで終わり? というのが素直な感想だった。いや、決して体力的に余裕のある「もう終わり?」ではなく、山道はまだまだ続くだろうという絶望の中に見えた希望、とでも言おうか。だから、嬉しいと同時にほっとする感情のほうが大きかった。体力的に限界になっていたのは、一目散に山荘に登って行けず、あとわずか数Mを残して立ち休みをして休憩を取らなければならなかったことでも明らかだろう。
とはいえ、ようやくなんとか槍の肩に到着したのである。
時刻は10時7分。ババ平を出てから3時間46分が経っていた

さあ、あとは穂先の往復だ!

写真説明:一番上はヒュッテ大槍JCT。まだあとひと登り、といった場所だ。
2番目は岩小屋。中は人が3人くらいが入れるほどの広さ。でも風雨はしのげそうにない。上からの雨ならまだしも、間口は広いので。
3番目は追い越した殺傷ヒュッテ。後方に常念岳が見える。ここまでくればあと一息、である。
一番下の写真は最後のカーブから槍ヶ岳小屋を見たところ。あとは一直線に登るだけなのだが、それがうまくいかない。