木曜日, 10月 04, 2007

槍ヶ岳登山 その4


ババ平を出たのは6時21分。大曲(水俣乗越)までは平行移動。そこから登りが始まった。ただ、傾斜はきつくない。ゆっくりゆっくり、徐々に徐々に高度を上げていく感じだ。当然、その分距離が出る。
前方を見ると、はるか遠くに登山者がいるのがわかる。「あそこまで行くのか~」やや萎えるところである。本当はあそこまでどころか、さらにその先に登りが待っているのだが、視認できない登りは実感がわかない。むしろ遠くに見える小さな登山者が、この先の困難を予想させて辛くなるのだ。

とはいっても、登るしかない。やることは一歩一歩足を踏み出すことだ。

やがて大きなカーブとともに槍沢のカールが見えてくる。が、槍ヶ岳はまだだ。このあたりから方位の関係で日陰がなくなった。いきなり暑くなる。半そでのTシャツ一枚になるが、ふと思い直して、長袖のTシャツの袖の部分だけを両腕に通した。日焼け止めを持ってこなかったので、こうする以外にない。格好悪いけど、この晴天ではあっという間に焼けてしまうに違いない。歩きにくいということはないので、このスタイルで登ることにする。

1時間ほど登ると、天狗原分岐に出た。ここで、ここまでほぼ一緒に登ってきた登山者がザックを置いて天狗原のほうに向かった。おそらく天狗池で逆さ槍を撮るのだろう。「そうか、そういう選択肢があったか」と思ったが、じつはこの時点ですでにバテバテだった吉祥丸は、さすがに寄り道をする気力はなかった。といって帰りに寄れる保証もなく、またこの天気が明日も続くとは限らないので、逆さ槍を撮るのは今しかチャンスがないかも、などと後悔するのだが、もう分岐から登ってしまった。戻るのは論外なのでそのまま登ることにする。

分岐から45分ほど登ると水沢に出る。最後の水場だ。最初はどれが水場かわからなかった。前にいた夫婦は沢の水を汲んで飲んでいた。吉祥丸もその水を汲みながら、いくら水沢でも沢の水はどうかな、と思い、ふと見上げると岩とハイマツの間から水が流れ落ちているのが見えた。明らかに岩の間を染み出た湧き水である。こっちだ! そう確信した吉祥丸はそこまで登って水を飲んだ。冷たい。うまい。ペットボトルを満杯にし、さらに飲んだ。ペットボトルには粉末のアミノバイタルを入れる。これがうまくて、このあとの登りを大いに助けてくれた。

が…。ちょっと進んだところでこの水を飲もうとしたら手が滑った! 冷えたペットボトルは水滴を持ち滑りやすくなっていたのだ。手から落ちたボトルは斜面を転がり、3M下くらいで止まった。ガレ場の落石が発生しやすい場所だ。だが、放っておくこともできない。この先水なしではそれこそ生命にかかわる危機だ。仕方がないので恐る恐る取りに行く。やはり浮き石だらけでズルッといったら盛大な落石を発生させそうだ。ゆっくり足場を確保しながら下る。ようやくボトルを回収、今度は登りだ。これも気を使いながらゆっくり慎重に登って、ようやく元の場所に戻ったときは10分くらいロスしてしまった。こ山ではんな大したことのない崖っぷちでも水を飲むときに注意しなければならない、そんな当たり前のことに気づかされた。アクシデントではあったが、これで気合が入ったのも事実。そしてちょっと進むと…。

槍が見えた!

ふと振り向くとそいつはそこにいた。まだだいぶ遠いけど、今まで見たどの槍より大きかった。

これでがぜんやる気が出た。不思議と歩きも軽快になる。
あとはこの槍を見ながらひたすら登るだけだ。

写真説明:上の写真はババ平から少し進んだところ。まだ平坦な道だ。でも景色は最高。天気も最高だった。
次の写真は天狗原ジャンクション。「JCT」という表現が使われているのがかっこいい。
3枚目は一目見てわかるとおり野生の日本猿。大人で座っている座高で60cmくらいか。近づくと警戒したが逃げなかった。ナナカマドの実か何かを茎の根元からバリバリ食べていた。
最後の一枚は槍が見えたところ。画面右側から歩いてきて左に抜ける場所。槍沢カールの入り口だ。ここから槍を正面左に見ながら登っていくことになる。ゴールは見えているのだが、見えているだけに? なかなか進まない。ちまにみここから槍ヶ岳山荘まで距離1500mの表示があった。